5 悪性インフレ防止のための景気対策国民積立預金の提案


マネーストックがBIによって度を超えて増加し、それによって悪性インフレが起こることがないように(インフレ率をコントロールするために)、

  

景気対策国民積立預金という制度によって適切な金額をマネーストックの外へと移動するのがベストではないかと私は考えています。そのお金は悪性インフレ対策(インフレ率コントロール)だけでなく、もっと広い意味の景気対策のための積立金としても活用できます。

  

この景気対策国民積立預金は井上案、駒田案、OMMBIのいずれにも有効に活用できます。

  

景気対策国民積立預金とはどういうもので、どのようにして悪性インフレを防止するために(インフレ率をコントロールするために)、マネーストックの外への移動がなされるのでしょうか?

  

1)ある月のBI総額をX円とします。また、BIの内で、海外への支払いに使われる分をe円とします。

  

2)そうすると、その月のマネーストックの増加額は(Xe)円ということになります。月初めの、BIを配る前のマネーストックをZ円とすれば、月末には、マネーストックは(XZe)になっていることになります。

  

3)BIX円は、その一部のα円は貯蓄に回され、残りの(X-α)円は消費にまわされて企業(含む、個人業者。以下同様)に流れ、その先も企業から企業へと流れ続け、給料日にはそのうちのβ円が給与の一部として支払われ、その一部e円は海外への支払いに使われ、月末には、企業の支配下に存在する“月末の剰余金残高”(その中には後述の、プラス給料も含まれる)の一部になります。

  

4)上にも記したように、企業は給料日が来たら先月と同じ額の給与を支払いますが、上に記したように、貯蓄にまわったBI総額をα円、給料日に支払われた給与総額のうちのBI総額をβ円、海外への支払いに使われた分をe円とすれば、月末に全企業の支配下に存在する “月末の剰余金残高”の増加総額は(X-α-β―e)円です。

  

5)この(X-α-β-e)円に貯蓄にまわったα円と先に給与として支払ったβ円を足した(Xe)円がその月のマネーストックの増加額だということを確認しておきます。

  

6)毎月、悪性インフレにならない範囲で適切と思われるマネーストック増加率を設定し、その増加率になるような適切な金額T円を景気対策国民積立預金として"月末の剰余金残高"からマネーストックの外にある国の専用口座に移動します。この預金については集合体としての国民が国に対して債権を持ちます。その債権をいつなんのためにどの程度行使するかをについて決定する権限を持つデモクラティックな委員会も作ります。

  

7)この時点で、月末に企業の支配下にある“月末の剰余金残高”の月間増加総額は(X-α-β-eT)円になります。

  

8)この“月末の剰余金残高”、(X-α-β―eT)円については、給与所得者と企業に実質的に平等になるように配分します。具体的には、たとえば、景気対策国民積立預金を差し引いた個々の企業の“月末の剰余金残高-景気対策国民積立預金”

 

R円について、それを先月の個々の企業の支払給与総額と企業利益総額の割合、m:(1-m)に配分し、mRは従業員にプラス給与として支払い、(1-m)Rはプラス月間企業利益としてそれ以外の月間利益と合算し、全体として企業の月間利益にします。(配分の割合は、各企業内で、前月の例に依ることなく自由に決めてもいいでしょう。)

  

以上1)~8)が、景気対策国民積立基金はどのようにしてマネーストックの外に移動させられるのか、という設問に対する関する私の考えです。

 

「3-2」に記したように、OMMBIの場合は、その月末残が自動的に景気対策国民積立預金の一部になります。

 

 BIは国民一人一人(=消費者)を起点に経済というボディを巡って血液としての役割を果たしたあと悪性インフレの恐れを消す景気対策国民積立預金となり、いざとなったときに再び国民経済の役に立つ、そういうものになるでしょう。

 

いわば、景気対策(インフレ率コントロール)のためにお金を溜めたり出したりできるように設置されたダムのようなものです。

  

 

 

 

この制度があれば、井上案も、駒田案も、OMMBIも、悪性インフレを起こすことなく、必要ならすぐにでも、生存だけでなく幸福追求を経済的に保障するに足る十分大きな額のBIを実現できるでしょう。

 

悪性インフレが起こらないように徐々にBI額を増やしてゆく場合も、月単位でお金の流通量をコントロール可能なこの制度を織り込んだBIであれば、年単位でだけでなく、112か月の間の任意の単位で、あるいは経済の動きに合わせて何か月単位と決めることなく柔軟に、徐々にBIの額を増やしてゆくことができるのではないでしょうか。

 

 

景気対策国民積立預金は今後の経済の流れの中で柔軟に様々な形の活用が可能で、また、国民の合意さえあれば使途を拡大して、景気対策だけでなく、芸術文化学問学芸スポーツ等の振興のために、奨学金として、社会保障のために、など幅広く活用することもできると思います。

  

その積立預金規模は、目標インフレ率をどのくらいに設定するか、BIの経済効果がどのくらいになるかなどによりますが、BI総額の50-90%くらい積立預金になるのではないかと思われます。

  

7万円のBIの年総額は1044960億円、月10万円のBIの年総額は1492800億円、月15万円のBIの年総額は2239200億円なので、当面、相当の金額を積み立てることが可能でしょう。

 

OMMBIの場合、貯蓄にまわされる額αは基本的に0円で、月末に残が出たとしてもそれは貯蓄できず景気対策国民積立預金の一部としてマネーストックの外に移動するので、普通マネーBIに比べて積立預金規模もより大きなものになると思います。

 

OMMBIは普通マネーと区別されながら流れることになると思いますが、そのように流れることによって上記の1)~8)に出てくるα、β、eの数値が正確に把握でき、マネーストックの外に移動すべき適切な額もその分正確に決められ、インフレ率コントロールもより行いやすくなるように思います。

 

今後世界恐慌が勃発した場合にはOMMBIと景気対策国民積み立て預金のセットがそれを乗り越えるためのもっとも有効な手段となるしょう。前者によってマネーストックを最大限に増やし、増えすぎた場合には後者によって適切な額をマネーストックの外に移動することによって悪性インフレを避け、そのようにして、車の両輪的な効果によって健全に景気回復及び実体経済回復を得ることによって・・・。

 

基金ではなく積立預金であって、徴収ではなくマネーストックの外への移動であり、国民が集合的に債権を持つ、国民主権的な位置づけと使途のこのような制度であれば、国民の理解と賛成も得やすいのではないでしょうか。(税も、形は徴収されるものではあっても、本来はそのような性格のもののはずなのですが・・・。)

  

1か月サイクルでこの制度について説明しましたが、もしも半月サイクルで(給料も半月サイクルにして)この制度を運用できるのであれば、よりきめ細かい悪性インフレ対策が可能になるかもしれません。

  

こういう制度があれば、BIの額がスタート当初から大きくても悪性インフレは起こらないのではないかと思います。不足の事態の勃発に対してすぐに十分大きな額のBIを継続的に給付しなければ対応できないような場合にも、必要があればインフレ率を一定範囲内にコントロールするためにこの制度を有効に活用することができるでしょう。

 

以上はもちろん単純化した説明ですが、基本はこれでいいだろうと考えています。(もしもあやまりや見落とし等がありましたら、どうぞ指摘して下さい。)

  

なお、たとえば、マネーストックの外に移動すべき金額のうちのある部分は景気対策国民積立預金として移動し、残りの部分は税として徴収する、というようなハイブリッドな制度も可能で、

  

それを実施した場合、税として徴収した分をたとえば赤字国債の解消のために使うとすれば、そう長からぬ年数で赤字国債は完全に解消されることになる可能性が大きいと思います。それは、いわゆる財政規律論者にとっても歓迎すべき、悪性インフレ対策になり、しかも赤字国債を解消できる一石二鳥のスキームであると言えるのではないでしょうか。

 

次に、「BI実現によって経済に悪影響を及ぼす程度に人が働かなくなるようなことがないこと」という条件について、私の考えを記したいと思います。

 

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4 1965-1981年の例では10-20%のマネーストックの増加は悪性インフレをもたらさない に戻る

6 「BI実現によって経済に悪影響を及ぼす程度に人が働かなくなるようなことがないこと」という条件について に進む

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