2 井上案、駒田案について


 経済学者の井上智洋さんの案、社会システム観察家・作家の駒田朗さんの案についてはご存じの方も多いかもしれませんが、ここにあらためて、それらの概略を記します。

  

井上さんはその著書『AI時代の新・ベーシックインカム論P93-96で概略次のように述べています。

  

「国債を財源にして1年目には月額1万円、2年目には月額2万円という風に年々給付額をふやし、たとえば7万円にまで引き上げる。国債は日銀が買い入れる。この過程でインフレ率が2%を大きく上回り続けた場合、財源を国債から税金に切り替える。こうして7万円にまで引き上げるBIを固定BIとし、それに加えて、景気をコントロールするための変動BIを創り、これについては政府貨幣を用い、その額はインフレ率や失業率に応じて変動させる。デフレ不況が続けば変動BIの給付額を増やし、逆にインフレ好況が続けば(=悪性インフレが起こりそうになったら:荒井註)その額を減らす。」

  

駒田さんはその著書『最強のベーシックインカム』P243-244で次のように述べています。

  

「政府発行の通貨で初年度は月額1万円ではじめ、翌年度から毎年1万円程度配る額を引き上げて10年程度の期間をかけて月額10万円まで引き上げる。」

 

と。

 

そして駒田さんは、インターネットの彼のウェブサイト「ねこでもわかる経済問題」中の、

 

「ベーシックインカムは徐々に導入しよう」https://sites.google.com/site/nekodemokeizai/beshikkuinkamu/jyojyo

 

の中で、

 

「現在、金融緩和政策として日本銀行が年間80兆円の現金を発行して民間銀行から既発行の国債を買い取っておる。この80兆円のうち15兆円を使って新規に国債を買い取り、これを財源として政府がベーシックインカムを実施することが可能じゃ。このように政府がおカネを発行して国民に給付することをヘリコプターマネー(ヘリマネ)というんじゃ。」

 

と書いています。「国債を財源に政府がマネーを発行する」という、井上さんと同様の手法によるBIが彼の提案だということです。まず1万円から始めて徐々に金額を増やしてゆくという点でも二人の考えは共通しています。

 

  

井上さんも駒田さんも、

 

①悪性インフレを起こさないように(&不況にならないように)、

 

 

②経済に悪影響を起こさない程度に人が働かなくなるようなことがないように、

  

注意しコントロールしながらBIを実現し推進してゆこうと考えています。

  

彼らの著書も踏まえながら、悪性インフレを起こさないようにするためにはどうしたらいいか考えていくうちに行き着いたのが、後述する、景気対策国民積立預金という制度です。

  

ところで、BIの目的として、景気回復及び実体経済成長があります。

 

 この点について、駒田さんは前掲書のP19で、

  

「国民に徐々にお金を配るとみんながおカネを使うようになるから、消費が増えて国民も豊かになるし、景気も回復するし、経済も成長するわけだ」と記しています。

  

それを読んで目がとまったのは、「徐々にお金を配る」というところで、それについて私は次のように思いました。

  

「配るBI額が少ないと、もらった国民はその全てを消費せずに貯蓄に回し、その結果、景気回復及び経済成長が全部消費にまわした場合ほど得られないのではないか」

  

それでもいいのかもしれません。しかし、

  

「配るBI額が少なくても、その全てを消費に回してもらって最大限の景気回復及び経済成長を得る方法があるのではないか」

  

そう考えたのがきっかけで、私はOMMBIという、政府マネーBIのバリエーションを考案するに至りました、。

  

井上案でもいい、駒田案でもいい、政府マネーBIが実現すれば、今後AIロボットが人間から仕事を奪う流れが深化し、行き着くところまで行き着いたとしても、国民は(人類は)十分な額のBIを得て経済的に生存と幸福追求を保障される道が拓ける。そう、私は思っています。

  

そういう、これから始まるであろう、BIの長い歴史の流れの中では、その創世記において少額から始まる場面だけでなく、「提案編 結び」に記すような、この先の長い状況の変化の中でもOMMBI(の考え)を部分的または全面的に採用すべき場面もありうるのではないかと考えています。

  

そのOMMBIについて、次に記したいと思います。

  

(念のために記しますが、基本的に国債を財源としつつも、BIの実現プロセスの中で過渡的・部分的に財源を国債から税に切り替えることがインフレ率コントロールのために有効な場面がありうると考える井上案に、私は全く反対ではありません。その考えは、景気対策国民積立預金の考えに通じるものだからです。)

 

(なお、「3-3」に記すように、OMMBIについても、1か月で価値の消滅する国債を発行することによってOMMを生み出してそれを行うことができます。)

 

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1 税を財源とするBIではなく、税を財源としない、政府マネーによるBIを実現すべき に戻る

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