1 税を財源とするBIではなく、税を財源としない、政府マネーによるBIを実現すべき


 BI(ベーシックインカム)を大別すると、税を財源とするBIと税を財源としないBIとがあります。

 

税を税源とするBIは、所得税、消費税、相続税などを税源とし、徴収した税額分=配るBI総額になるBIです。

  

税を財源としないBIは、財源の制約なしに国がお金(マネー)を発行して、それを配るBIです。

 

税を財源にするBIは、次のイ)ロ)ハ)のディメリットがあります。

  

イ)その実現のために税負担が大幅に増大せざるを得ず、その実現に伴う税負担増によって実質的に収入が減る人達が出てきて、そういう人達はBI実現に賛成できない可能性がある。

  

ロ)確保できる税財源額によって給付額を左右されざるを得ず、ある程度以上大きな金額を給付するためには年金・医療・生活保護・失業手当などを削る必要があり、税収には限度があり、給付されたBIの中から翌年度BI財源分の税を負担することによって、実質的な給付額は目減りするので、十分な額を配れない。

  

ハ)AIやロボットのおかげで人類が食うための仕事を否応なくする必要がなくなる時代がいずれ来るとして、今はそういう時代に向かってゆく過渡期である。

 

この過渡期においてAIやロボットによる生産性の向上、生産の効率化、仕事のAIやロボットへの代替化が進むにつれて格差はますます拡大し、量的にも質的にも貧困層が拡大し、税収は減ってゆく一方となるだろう。にもかかわらず、税を財源にBIを配るとしたら、その給付額は十分な額にほど遠い少額になっていかざるを得ず(将来の話として、大企業や富裕層がAIロボット税なども含めて十分なBIを配るために必要な財源分の納税に同意し十分な必要額を実際に納税できるのであれば話は別かもしれないが・・・)、その結果経済全体もどんどん縮小せざるを得なくなるだろう。

  

これに対して、税を財源としない、政府マネーによるBIイ)ロ)ハ)のディメリットがなく、それを必要としないという理由で財源問題をクリアでき、すぐにでも、十分な額のBIを配ることができます。(年金・医療・生活保護・失業手当などを削る必要がないのも、税を財源としない、政府マネーによるBIのメリットだということも、ここに付言しておきたいと思います。)

  

ですので、BI実現のためにクリアすべき六条件のうちの四つをクリアでき、あとは次の二条件をクリアすればいいことになります。

  

①悪性インフレを起こさない。

 

②経済に悪影響を起こさない程度に人が働かなくなるようなことがない。

  

①の条件をクリアできるものとして、私は、「5」に記す後述の景気対策国民積立預金という制度を提案したいと思います。悪性インフレが起こるのはBI月額が大きくなる場合ですが、この制度によってBI月額がどんなに大きくなっても①はクリアできるでしょう。

  

②についての私の考えは「6」に記します。

  

税を財源にしない場合も、する場合も、実質的同額のBIを給付した場合に悪性インフレを起こす可能性及び経済に悪影響を及ぼす程度に人が働かなくなる可能性は同じです。

  

だとしたら、残りの四条件をクリアできる、税を財源にしない、政府マネーによるBIを行う選択をすべきでしょう。

  

政府マネーによるBIには次の二つが考えられます。

  

政府が国債を発行し、それを中央銀行(今の日本では、日本銀行)が買い取って、その代金として代金分のお金を発行して政府に渡し、そのお金をBIとして国民に配る。

  

政府が直接に貨幣発行権を行使して(中央銀行を介さずに)政府マネーとしてのお金を発行し、そのお金をBIとして国民に配る。

  

たとえば、経済学者の井上智洋さんや社会システム観察家・作家の駒田朗さんは前者をそれぞれの著書で提唱しています。次の「2」で彼ら二人の案について紹介し、更に「3」「3-2」「3-3」で、税を財源としない、政府マネーBIのバリエーションであるOMMBIという私のアイディアについても記したいと思います。

 

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